懲戒解雇の妥当性
2015年04月20日
こんにちは。
社会保険労務士の杉山 加奈子です。
今回は、「懲戒解雇の妥当性について」をテーマにお話させていただきます。
この仕事を長くやっていると、関与先から、
「こんなけしからん従業員がいるのですが、懲戒解雇にしても問題ないですよね?」
といったご質問・ご相談をよく受けます。
話を聞く限り、確かにとんでもない従業員で、社長の怒り心頭のお気持ちを察するに余りあることがほとんどです。
ただ、解雇の中でも「懲戒解雇」は従業員にとって、死刑宣告に等しい大きな処分ですから、よっぽどのこと(窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為等)でないと、争いが生じた場合、無効とされてしまうのが一般的です。
懲戒解雇をしたいような従業員は、解雇通知後、職場の風紀や秘密保持等の観点から、不用意に事務所にいてもらうと好ましくない場合多く、即日解雇としたい人がほとんどです。
となると、必然的に30日分の解雇予告手当の支払義務が生じます。
盗人に追い銭なんてとんでもない!とお怒りになるのも当然でしょう。
しかし、労働基準法上は、懲戒解雇であろうと、解雇予告手当の支払いは免れないのです。
労働基準監督署の解雇予告の除外認定を受けることで、解雇予告手当の支払いなしに即時解雇できますが、認定までそれなりに日数を要します。
また、横領の確たる証拠、又は従業員が横領の事実を認めない限り認定自体、難しいでしょう。
よって、従業員を懲戒解雇する前に、まずは退職勧奨という方向で持っていってください、とアドバイスさせていただいています。
従業員に懲戒事由(横領などの事実)を突き付け、本来なら懲戒解雇に値するけれども、自ら退職届を提出してもらうよう促すのです。
退職届はその場で即署名してもらえるよう事前に準備しておきます。
もちろん、実際、言葉にする・しないに関わらず、退職届を出さなければ、懲戒解雇!という暗黙のルールなので、裁判となれば、自らの退職を錯誤・強迫によるものとして無効と主張してくる可能性もあります。
ですので、従業員の性格も考慮してご判断いただくようにお願いしています。
仮に退職勧奨に応じない場合でも、後の有効性を考え、懲戒解雇ではなく極力普通解雇にしてもらうようお願いしています。
退職勧奨は、退職を円滑に進めるために、会社側が一定の条件を提示するのが一般的です。従業員が退職に難色を示してくるような場合はなおさらです。
退職勧奨に合意して即日退職してもらうような場合は、法律上解雇予告手当の支払いは生じませんが、それに相当する分ぐらいは支払われた方が無難かと思います。
十分に納得してもらえず腑に落ちない形で辞めていく従業員に対してのせめてもの気持ちです。
後のトラブルを想定し、損して得取れ!といってところでしょうか・・・。
いずれにしてもケースバイケースですが・・・。
● 編集後記 ●
辞めてもらう際に従業員に渡すお金。名目は「解雇予告手当」だったり「有給の未消化部分の買い取り」であったりいろいろかと思いますが、一種の手切れ金みたいなものですかね。
ちょっとした悪い冗談ですが、男女の離婚の時のケースを思い浮かべていただけると解りやすいかと思います。(笑)
縁あって一時でも一緒になった(一緒に働いた)のだから、最後もお互いしこりを残さず別れたいものです
最後までお読みいただき、ありがとうございました。