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退職理由を会社都合退職にして欲しいと言われたら・・・。

2014年09月21日
おはようございます。
社会保険労務士の杉山 加奈子です。
 
今回は、「退職理由を会社都合退職にして欲しいと言われたら・・・。」をテーマにお話させていただきます。
 
資格試験に専念したいという理由で退職の意を示してきたA君。ところが、本人の意思で退職を申し出たにも関わらず、会社都合退職、つまり解雇にして欲しいと会社に申し出てきたのです。
 
実際に、A君のように自己都合退職なのに会社都合退職にして欲しいといってくる従業員は少なくありません。
 
というのは、自己都合退職か会社都合退職かで、退職者の権利が大きく異なってくるからです。
 
自己都合退職の人には、7日間の待機期間+3か月の給付制限期間後でないと、基本手当(=失業保険)は支給されませんが、
 
会社都合退職の場合は、7日間の待機期間が経過すれば、制限期間を待たずして、基本手当はすぐ支給開始となります。
 

また、勤続年数によっては、自己都合退職より会社都合退職のほうが、基本手当の給付日数が長くなり、より多くの基本手当を受け取ることができます。



会社としては、A君の申し出にどうしていいものか対応に困ってしまいました。
何、寝ぼけたこと言ってるんだ? と一蹴すればいい話ですが、
A君には、在職中、一生懸命に働いてもらったし、できれば、A君のよきに計らいたいと思う場合もあるでしょう。
 
しかし、A君の要求通りに安易に会社都合退職にするのは、危険です。
 
事実と異なった退職理由を記載することは、紛れもなく虚偽であり、虚偽記載によって本来受け取れない額の基本手当を受け取ることは、不正受給となります。
 
また、会社都合退職とした為に、解雇予告手当を請求される可能性だってあります。
そもそも、自分から辞めると言ってきた従業員に対し、本人の要求通りに会社都合にしてあげて、解雇予告手当を請求されることなんてあり得ないでしょ?と思うかもしれませんが、従業員が会社に対していい感情を抱いていなかった場合、最後、従業員にしてやられることだってあるのです。(何とも恐ろしい世界です。)
 
また、会社都合退職者を出すことによって、助成金の受給要件に大きく影響しますので、会社都合退職としたがばかりに、助成金が受け取れなくなってしまったなんてことにもなりかねません。
 
何よりも、A君の要求を安易に呑んでしまうと、こういった前例が社内で浸透してしまい、第2、第3のA君が当然のように現れ、統制が取れなくなります。
 
対応には十分ご注意ください。
 
 
● 編集後記  
 
私の身近には、結婚・育児等を理由に辞める女性は別として、転職前に失業保険を受け取ったことがある人の話をあまり聞きません。
 
退職後、失業保険を受け取りながら転職先を探すといったリスキーな辞め方をする人より、
転職先を決めてから、退職を申し出る堅実派が多いのかもしれません。
 
辞めた後、転職活動をすると採用側の心象が多少たりとも悪くなることは否めなく、場合によっては足元を見られ、条件を下げられる場合だってあります。また、なかなか転職先が見つからないと、焦るあまり望まない条件で就職してしまうことだってあります。
そういった経緯で入った会社は結局長続きせず、また退職。そしてさらに悪条件の会社に転職。そしてまた退職。といった具合に短期間で転職を繰り返す履歴があだとなり、なかなか負のスパイラルから抜け出せない人を、以前、仕事関係で数多く見てきました。

失業保険を最初から当てにすると、かえって痛い目に合うかもしれません。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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