おはようございます。
社会保険労務士の杉山 加奈子です。
今日は、「交通費の不正受給とその対策について」をテーマにお話させていただきます。
通勤費の不正受給は、よく見受けられるトラブルの1つです。
通勤費を支給するかしないかは会社で自由に決めることができますが、一般的に、実費弁償として支払っている会社が多いです。支給の上限額を決めているところもあります。
一般的なケースでは、不正受給といっても従業員側にはあまりそういった意識はなく、
転居に際して申告をするのを忘れていた、最寄りの駅までバス通勤で申請していたが、健康のために自転車通勤に切り替えた、雨の日はバスで通勤することもあったので特に会社に申告する必要もないと思っていたなど、ちょっとしたミスや認識の差によるものが多いようです。
しかし、最近、関与先において、3ヵ月(6ヵ月?)の定期券をコピーして会社に提出した後、払い戻しをし、返還金を不正に受給していた社員がいたとの連絡を受けました。
都内だと、何らかの公共の交通機関を利用しなければ通勤できないことが多いのでこのようなことはあまり考えられませんが、地方だと、公共の交通機関で申請しておきながら、実際には自家用車で通勤又は家族に送迎をしてもらっていることもあるようです。
ここまでいくと、確信犯で、会社としては看過することはできないでしょう。
「このような背信行為を行う人間とは、これから先、社員として信用できない。」そう言った気持ちになってもおかしくはありません。
しかし、不正受給を理由として懲戒解雇するのは、過去の判例からも解雇権濫用となり難しいかと思われます。
よって、会社としては、不正受給を未然に防ぐ体制を整えておく必要があります。
従業員ごとに定期券有効期間を把握し、更新時には、定期券のコピーと領収書の添付を義務付けることはもちろん、下記規定例のように、就業規則に通勤費の取り扱い、不正受給した場合の返還義務・懲戒の可能性も盛り込み、従業員に周知徹底させておきましょう。
少なくとも、就業規則に規定しておくことで、抑止力には成り得ます。
第○条(通勤手当)
通勤代は、通勤に係る実費支弁を目的として、通勤に要する実費に相当する額を支給する。ただし、通勤の経路及び方法は、最も合理的かつ経済的であると会社が認めたものに限ることとする。
第○条(異動の届出義務、不正の届出)
通勤経路を変更するとき及び通勤距離に変更が生じたときは、速やかに会社に届け出なければならない。
2 前項の届出を怠ったとき、又は不正の届出により通勤代その他の賃金を不正に受給したときは、その返還を求め、就業規則第○条(懲戒の事由)に基づき懲戒を行うことがある。
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● 編集後記 ●
かつて、勤務時代、品川から新橋まで通勤していたことがありました。
通常は、JRを使用しますが、子供の保育園の最寄駅が泉岳寺だったため、泉岳寺経由だと京急線と都営浅草線を利用しなければなりませんでした。
しかし、会社は、「最も合理的かつ経済的であると会社が認めたもの」という理由で、JRを使用したものとみなした金額でしか交通費の精算を認めてもらえませんでした。
正直いい気はしませんでしたが、会社とは、これぐらい厳正なものでなくてはならないものなんだと肌で感じた出来事でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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