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時短勤務者の固定残業手当の取扱い

2016年03月18日

    こんにちは。
 社会保険労務士の杉山 加奈子です。


 今回は、「時短勤務者の固定残業手当の取扱い」をテーマにお話させていただきます。

 いよいよ来月から新年度となりますが、この時期、育児休業を終え復職される方の
 労働条件についてのご相談をよく受けます。


 育休明けの復職から時短勤務を利用される方は比較的多いのですが、賃金の額について
 は、時間が短縮された分の賃金を減額するといった取扱いが一般的です。

 これまで8時間勤務だった方が時短を利用して6時間勤務となったのであれば、時間按
 分してこれまでの賃金の「8分の6」を基準に決定するのが妥当でしょう。

 では、基本給に45時間分の固定残業手当が加算されてあった場合はどうでしょう?
 8時間から6時間勤務への時短勤務及び時間外労働を課さない労働条件だったとします。

 残業がいっさい発生しないわけですから、
 
 これまでの45時間分の固定残業手当は全額カット、
 基本給×6/8
 
 を支払うといった取扱いが合理的なようにも一見思われます。
 実際、このような捉え方をされる事業主の方が多いのも事実です。


 しかし、固定残業手当の全額カットは金額的にも大きく、場合によっては時短勤務者が
 このようなことをあらかじめ想定していないため、トラブルになることが多いのです。

 復職前は、45時間相当分、実際に残業していたのか?
 固定残業手当とは名ばかりで、実際には、ほとんど残業が生じていないような場合は、
 安易に全額カットすると時短勤務者にとってかなり大きな不利益になります。

 また、未払残業を法に合致させるため、後付けで固定残業手当を導入したような場合は、
 実態として、これまでの総支給額を基本給と固定残業手当に振り分けただけに過ぎないので、
 時短勤務者に固定残業手当の部分を全額カットすることは合理性に欠ける要因にはなります。

 固定残業制の導入の経緯、残業の実態等、個別の状況によっても異なるので、一概に
 固定残業手当の全額カットの是非を問えないのですが、


 少なくとも育児休業規程や賃金規程に

「時間短縮勤務者には、固定残業手当の適用をしない。」

「新たに基本給を軸に時間按分して、賃金の見直しを行う。」

 旨、明記しておきましょう。

 労働条件の大幅な変更となるので、雇用契約書を締結し直すことも必須です。

 時短勤務者への賃金の取扱いがあらかじめ周知されていれば、時短後の自分の賃金が事前に
 把握でき、その額を考慮した上で、時短勤務の制度を利用するかどうか従業員自ら選択できる
 わけですから、トラブルも少なくなるでしょう。

 実際には、復職後の賃金をめぐって、表立ってトラブル勃発というのは、数少ないのかも
 しれませんが、それが一要因で復職後まもなく退職している人が少なからずいるようにも
 肌で感じます。


● 編集後記 ●

復職後の大幅な賃金カットとなると、復職して無理して時短で働くよりも、育休を継続して
育児休業給付金をもらっている方が、得といった場合もあり得ます。

そうなると、従業員のモチベーションは下がる一方ですよね。
労使双方の立場は違えども、ともに折り合える着地点を見つけて、きちんと規定化しておく
ことが最良の策だと思います。



「言うは易し、行うは難し」ですが・・・。(^-^;

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